ブラジルの現状

私はブラジル出身の日系ブラジル人です。
12歳までブラジルで育ち、その豊かな自然と多様な文化に囲まれた国での経験から、ブラジルの素晴らしさを知っています。

しかし、ブラジルでは所得格差による貧困層の拡大が、治安悪化の主要な要因となっています。

ブラジルの治安は日本に比べて非常に悪く、ほとんどの大都市にはファヴェーラと呼ばれるスラム街が広がっています。ファヴェーラに住む人々は経済的に差別され、十分な教育を受けられず、麻薬や犯罪に巻き込まれることが多いのが現実です。

ファヴェーラとは（wikipedia）

子供の頃、父親と街中を歩いている時に、同年代の子供たちが物乞いをしている光景を目にしました。
私が父親に「なぜあの子たちははそうなったの？」と尋ねると、父親は「ブラジルは素晴らしい国になれるはずだが、教育に課題がある」と答えました。

このような会話が私の心に残り、教育の重要性と経済格差の問題が国の未来に与える影響を痛感しました。

「武器から鍼灸プロジェクト」

このプロジェクトは、私のもう一つの故郷であるブラジルの貧困層の子供たちに、生きるための新たな道を提供することを目指す取り組みです。
私が日本で学んだ鍼灸術を活用し、ブラジルにおける経済格差や社会問題に直面している若者たちに、未来への希望と技術を与えることを志しています。

「武器を持つ手を、生業の手に変える」ということがテーマです。

鍼灸を通じて、子供たちに技術と職業の選択肢を提供し、子供たちが犯罪や貧困から離れた自立した生活を送れるようになることがこのプロジェクトのゴールです。

2017年から「武器から鍼灸プロジェクト」がスタートし、その翌年からは毎年1回ブラジルを訪れ、現地の鍼灸師向けに日本鍼灸セミナーを開催しています。また、2018年と2019年には、ファベーラ地域の小学校を訪れ、子供たちや地域の住民に鍼灸の紹介や武器から鍼灸プロジェクトの説明を行いました。

現在はプロジェクトの理解を広げ、ブラジルの貧困層に向けた学校の設立に向けて着実に前進しています。
このプロジェクトは挑戦的なものかもしれませんが、私たちは少しずつでも前進し、子供たちの未来に希望と可能性をもたらすことを信じています。

大内 アルベルト 敏雄